【ゲーム開発】ゲームの主人公とプレイヤーの乖離

「主人公をどれだけ喋らせるか?」

ドラクエ的な全く喋らない、喋るタイミングでほぼ必ず選択肢が与えられる場合、主人公とプレイヤーの一体感は高まるけど、キャラクターとしての魅力が削られやすい。

よく喋る主人公の場合、キャラクターの魅力は高まりやすいけど、プレイヤーが第三者として俯瞰する構図になりやすい。

みたいになりがちだと思います。
(個感)

「個人の感想です」を略したかったんだけど、これ読み方「こかん」だな!?


別に俯瞰するのが悪いってわけじゃないんです。
ただ、私が作りたいゲームのコンセプトとしては前者である方が望ましいということで。
しかし、できるだけキャラクターの魅力も維持したい。
なので、考えの違いが出やすい部分で選択肢を設けていきますが、実際のところ選択肢はコストです。

というわけで、選択肢以外の施策によって、プレイヤーと主人公の乖離を減らしていく方法を考えます。

プレイしたゲームの振り返り


まず、プレイしたゲームでストーリーをちゃんと覚えてるものを振り返っていきます。
なんで最近やったのが多いです。
以下、個感。

デス・ストランディング

プレイ中はほとんど喋らないがムービーは映画。選択肢なし。乖離を意識することはないが、ストーリーは映画なので、映画です。他のプレイヤーを意識するシステムの中で自分を意識することもあるが、ストーリーのサムとゲーム中のサムは、意識の中では全くの別人と言っていいかもしれない。

ドラクエⅪ

喋らない。選択肢あり。ない部分もあるが、ほぼプレイヤーの意思と同調しているので、一貫してプレイヤー=主人公だった。赤子の頃から描いてる上に、親、地元、幼馴染のエマ、これらを最初に出しているのも大きい気がする。仮に物語中盤とかで出てきたら、多分ちょっと困惑する。

ICEY

喋らない。選択肢はないがナレーションが行動を促してくるため、それに従うかどうかが選択肢と言える。主人公の出生が不明かつ、ゲーム自身がメタ的な視点をもたらしてくるので、主人公=プレイヤーとはあまりならなかった。出生不明には出生不明という過去がある。想像でしかないが、この場合は喋った方がプレイヤーとのシンクロ率は上がった気がする。

TOKYO DARK

めちゃくちゃ喋る。選択肢もある。喋る上に非常識な行動もそれなりにするし、元から人間関係が構築されているため、あんまり主人公=プレイヤーにはならなかった。ゲーム中に紡いだ関係や、プレイヤーと主人公しか知らない情報に言及する際はその限りではない。

UNDER TALE

喋らない。選択肢あり。そもそもプレイヤーに話しかけてきやがる。プレイヤー=主人公という一貫性は保たれているように感じるが、感じるだけかもしれない。いやまあ感じられるならいいんだけど……

ティアキン

喋らない。選択肢あり。RPGの手法を貫いているが、ストーリー上ではリンク=プレイヤーという感覚にならなかった。なぜ?過去作含め、どうしてもプレイヤーの知らない過去との結びつきが強いからかもしれない。リンクがプレイヤーの知らないとこで近衛やらマッソやらに選ばれているというのもあるかも。ゼルダとの仲にプレイヤーが関与しないのも大きい?

ファミ享

ファミ通みたいだね。喋る。選択肢あり。と言っても雑談内容を選ぶだけ(ではないが)。しっかり喋るのは後半くらいから。あんまり主人公=プレイヤーではなかったかも。恐らく、プレイヤーは雑談の話題を選んでいるだけであり、雑談以外の選択肢がないという状況の中なのに対し、相手から「雑談が好きだね」等と言われるのが乖離に繋がったのだと考える。

アンリアルライフ

よく喋る。特に回想でよく喋る。選択肢はあんまりないかも。目的がはっきりしてる上に、割と初期段階から主人公の過去が推測できるのもあって、シンクロ率はそこそこ高かった気がする。プレイ中は信号の方がよく喋ってる印象。回想は主人公がよく喋る。当然プレイ中の方がシンクロ率は高い。アンリアルライフでそうだったか覚えてないが、相手からの疑問に対し、主人公がその場で回答せずにプレイに戻るというのが、プレイヤーに考える余白(もとい導線)を与えて同調率を上げるのかもしれない。……別にその場で選択肢を与えてもいいのでは?ともあれ、思想の別れそうなシーンで喋らせないというのは有効かもしれない。疑問の提示から回答まで間を作るということも。

すみれの空

めっちゃ喋る。選択肢あり。ただ、選択肢が一期一会すぎるので、思いもよらぬ結果になって後悔しがち。当然それなりに乖離はあった。選択そのものより、事象の受け止め方の方で乖離が大きい印象。精神ダメージ耐性の違いかも。……いや、当事者であるか、モニターから見ているだけかの違いかも。結局、昔は仲良かったいじめっ子の「昔」の部分を、プレイヤーは知りませんから……。現実っぽいのに現実っぽくない独特の雰囲気も視点を高めにしてるのかも。

ポケモンSV

自分はスカーレットです。喋らない。選択肢あり。もちろん乖離は起きない。乖離は起きないけど、主人公とプレイヤーの結束も薄い。なんて言うか……ドラクエⅪの主人公は「自分であり、他人であり、でもやっぱり自分」みたいな感じだったけど、SVの主人公はもっと自分の純度が高かった。多分、ドラクエにあったような家族や地元の描写が少ないからだと思う。例えるなら、ドラクエは異世界転生。SVは憑依して好き勝手やる。みたいな?なんかこれと同じことをどっかで聞いたことある気がする……

ポケモンアルセウス

喋らない。選択肢あり。もちろん乖離はなし。主人公とプレイヤーが共通して持っている「ポケモンが好き」という大前提が否定されるところから進んでいくので、構造的に乖離が起きにくいんだと思う。

考えられそうなこと


適当に要所に分けて書きます。
上の各ゲームのなんやかんやは別に読まなくていいです。

選択肢


選択肢の有無自体は乖離に関係ない気がします。
飽くまで乖離を埋めるための選択肢と考えるべきでしょう。
システムの都合で止む無く選んだ選択肢に言及するのは、メタ的な視点で楽しませたいという場合を除いて避けるべきかもしれません。
下手に選択肢を並べるより、いっそ喋らない方がいい場合も。

発話


当然喋らない方が乖離は起きにくくなります。
ですが、主人公以外の人物における発言も影響するかもしれません。

人間関係


基本的にプレイヤーの知らない主人公の知人が出てくるのは悪手かもしれません。
極力新しい友人関係を育んだ方がよさそうです。
それかもう赤ちゃんからストーリーを進行させよう。
思い返してみると、ドラクエは少年時代から描く作品が多い気がします。

行動


基本的に倫理的にアレな行動はアウトですが、どっちかって言うと、その行動に対する覚悟や罪悪感の描写が大事な気がします。
行動の一貫性とかも一緒に。
でも、そういう時ってプレイヤーは大体笑いながらやってるんですよね……
当事者としての自覚を持たせ、その笑顔を奪い取ってやらないといけませんね。

目的


主人公の目的がはっきりしていると、プレイヤーもその指針に従って考えることができるので乖離が起きにくくなりそう。
ただ、目的を阻害された時の対応次第で大きな乖離が生まれるのも事実。
その目的の重要性をプレイヤーが理解できているかどうかってことだと思います。

現実味


ファンタジーがどうこうという話ではなく、現実味のない世界での冒険は、プレイヤーが呆気にとられている間に閉幕する可能性があります。
主人公も困惑してるならともかく、そうじゃないなら説明をちゃんとした方がいいかもしれません。

否定


今までずっと乖離について書いて来ましたが、乖離の逆、つまり同調については書いてません。
主人公とプレイヤーを同調させる上で、価値観の否定は有効だと思います。
価値観への賛同は、言わばストライクゾーンめがけてボールを投げるようなもので、その一点を外せば全て乖離に繋がりかねません。
他方、価値観の否定をストーリーが押し付けてくる場合、賛同の逆で、その一点さえ避ければプレイヤーと主人公は同調できます。
バトルが行われるようなストーリーでは、悪役がこういった無茶な思想を投じてくれるので、比較的同調しやすいんだと思います。

終わり


人が人を嫌いになるのと同様、地道に積み上げてきた主人公とプレイヤーの同調も、些細なことから一瞬で崩れ去ることと思います。
ですので、あまり考えすぎず……

締めとかいいや。
いいだろ別に。

まあ、投げたものは投げっぱなしで、いつか誰かがホームラン打ってくれたらいいなと思って寝ます。

コメント

  1. […] 【ゲーム開発】ゲームの主人公とプレイヤーの乖離 […]

  2. […] 「2Dアクションゲーム」と「ノベルゲーム」で、どっちの方がプレイヤーと主人公の一体感が強いか?個人的な意見ですが、私は前者だと思います。選択肢によって行動が変わるノベルゲームと、全ての動きを自分で操作できるアクションゲーム。私がそれまで作っていたのは「ノベルゲームに少しアニメーションを足したもの」だったと思います。「MVをゲームにしたい」のだったらこれでいいです。でも、私が作りたいものは「ゲーム体験をMVにする」ものでした。そのためには「プレイヤー=主人公」という認識を強く持ってもらう必要がありました。(何故ならプレイヤー=主人公という映画ではありえない「個々の選択」にゲーム体験の神髄があるという思想を持っているから)従って、ほとんど選択肢やポイントクリックでしか動かないゲームでは、自分の望むゲーム体験は得られないだろうという結論になりました。(以前書いた「主人公とプレイヤーの乖離」という話に近いです) […]

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